歯周組織再生療法は保険適用される?保険でできる範囲と自費との境目

歯列模型を持つ歯科医師|歯周組織再生療法の保険適用範囲の説明

歯周組織再生療法は、リグロスを使う方法と膜を使うGTR法の2つが健康保険の対象です。歯科用薬剤として薬価基準に収載された再生剤はリグロスの2規格だけで、エムドゲインなど他の再生材料は自費に分かれます。保険でできる範囲と1歯あたりの負担額、自費との境目を整理します。

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歯周組織再生療法は保険適用されるのか

保険で受けられる再生療法はリグロスとGTR法の2つのみ(出典: 厚生労働省 歯科診療報酬点数表、PMDA 添付文書等情報を基に当院作成)

歯周組織再生療法で健康保険が使えるのは、リグロスを塗る方法と、膜で歯ぐきを隔てるGTR法の2つです。GTR法は歯科診療報酬点数表に「歯周組織再生誘導手術」として840点が定められています(厚生労働省 歯科診療報酬点数表、2026年8月時点)。

リグロスはトラフェルミン(遺伝子組換え)を有効成分とする再生剤で、2016年9月28日に「歯周炎による歯槽骨の欠損」を効能・効果として承認されました(PMDA 添付文書等情報)。GTR法は膜を骨の欠損部に置き、治りの早い歯ぐきが入り込むのを防いで骨が回復する場所を確保します。

保険で受けられる再生療法は、この2つに限られます。当院はまずこの2つで届く範囲を見極めることが、費用を抑えながら歯を残す近道だと考えています。

保険でできる歯周組織再生の中身と自己負担額

手術部分は630〜840点にとどまり、費用差を生むのは上乗せされる薬剤費・材料費(出典: 厚生労働省 歯科診療報酬点数表、薬価基準収載品目リスト、材料価格基準を基に当院作成)

保険が適用される場合、1歯あたりの自己負担は3割負担でおよそ1,900〜10,400円です。歯肉剥離掻爬手術(フラップ手術)だけなら約1,900円、リグロス600μgを併用すると約8,200円、GTR法の1次手術は膜1枚で約5,300円が目安になります(歯科診療報酬点数表に基づく2026年8月時点の換算。手術・薬剤・材料に係る費用のみ)。

保険で受けられる歯周外科手術と1歯あたりの負担額

歯周外科手術には、歯ぐきを開いて汚れを取り除く処置から、失われた組織の再生をねらう処置まで段階があります。段階が上がるほど点数も上がりますが、いずれも公定価格のため自費のように医院ごとの価格差は生じません

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治療内容内訳合計点数医療費(10割)3割負担の目安
歯肉剥離掻爬手術のみ 手術630点 630点 6,300円 約1,900円
リグロス600μgを使う再生療法 手術630点+薬剤2,105点 2,735点 27,350円 約8,200円
リグロス1200μgを使う再生療法 手術630点+薬剤2,832点 3,462点 34,620円 約10,400円
GTR法 1次手術(膜1枚) 手術840点+材料942点 1,782点 17,820円 約5,300円
GTR法 2次手術(膜の除去) 手術380点 380点 3,800円 約1,100円

【換算方法】 1点=10円とし、薬剤料と材料料は公定価格を10で除して点数化しました(リグロス600μg 21,053.7円、1200μg 28,317.8円、歯周組織再生材料9,420円)。1歯にキット1本または膜1枚を使った場合の試算で、初診料・検査料・エックス線撮影料・投薬料は含みません。データ出典は歯科診療報酬点数表薬価基準収載品目リスト材料価格基準(2026年8月時点)。

リグロスを使う方法は「歯肉剥離掻爬手術+薬剤」で算定する

リグロスの用法は「歯肉剥離掻爬手術時に歯槽骨欠損部を満たす量を塗布する」と定められています。つまりリグロスを使う治療は、独立した再生手術ではなく、歯ぐきを開くフラップ手術に薬剤を上乗せする形で保険請求されます。

費用の大半を薬剤費が占めるのはこのためです。手術は630点(6,300円)ですが、リグロス600μg1本の薬価は21,053.7円と手術の3倍以上にあたります。それでも3割負担なら約8,200円に収まるのは、薬剤費にも保険が効いているからです。

GTR法は膜の材料費が別に加わる

GTR法は算定上まったく別の手術として扱われます。手術は840点で、膜(歯周組織再生材料)は1歯1枚あたり9,420円が材料費として別に加算されます。

気をつけたいのは、GTR法を算定した場合、歯肉剥離掻爬手術は別に算定できないという決まりです(厚生労働省 歯科点数表の実施上の留意事項)。同じ「保険の再生療法」でも、リグロスとGTR法は請求の仕組みから別物ということです。

要点: リグロスを使う方法は「フラップ手術+薬剤費」、GTR法は「再生誘導手術+膜の材料費」で、両者を併せて算定することはできません。費用差の主因は手術ではなく、薬剤か材料かの違いにあります。

保険適用の条件は検査結果と骨の状態で決まる

保険適用の可否は、歯周精密検査の結果と、骨がどう失われているかの2点で決まります。GTR法の対象は「根分岐部病変又は垂直性骨欠損を有する歯」と定められ、リグロスは「歯周ポケットの深さが4mm以上、骨欠損の深さが3mm以上の垂直性骨欠損」がある場合に使うとされています(歯科点数表の実施上の留意事項、リグロスの添付文書)。

歯周精密検査の結果に基づくことが出発点

歯周外科手術は、歯周精密検査の結果に基づいて行われるものと定義されています。精密検査は1本の歯につき複数の箇所でポケットの深さを測るもので、20歯以上なら400点(3割負担で1,200円)です。

再生療法の前には、歯石除去やスケーリング・ルートプレーニングといった歯周基本治療も入ります。汚れが残ったままでは、骨の再生をねらう条件が整いません。当院はこの段階で歯ぐきの炎症がどこまで引くかを見てから、外科処置に進むかを判断しています。

骨欠損の形と深さが要件を満たすか

厚生労働省の令和6年歯科疾患実態調査では、15歳以上で4mm以上の歯周ポケットを持つ人は47.8%、6mm以上の深いポケットを持つ人は12.3%でした(令和6年歯科疾患実態調査)。

この数字だけを見ると、ほぼ2人に1人が再生療法の対象に見えます。しかし当院は、ここが最も誤解の生じやすい点だと見ています。適応を決めるのはポケットの深さではなく、骨欠損の「形」です。骨が水平に減っている水平性骨欠損では、膜も薬剤も再生の足場を作れません。縦方向に深く削れた垂直性骨欠損や、奥歯の根が分かれた部分の病変が対象になります。

骨の形はエックス線やCTで立体的に確認します。相談に行く際は、ご自身の骨の減り方がどちらのタイプかを聞いてみてください。

\ 他院で難しいと言われた方へ /

保険が使えるかは骨欠損の形で決まるため、当院はCTを含む精密検査で適応を見極めます。

自費になる再生療法との境目はどこにあるのか

保険と自費を分けるのは効果の差ではなく公定価格への収載の有無(出典: 厚生労働省 薬価基準収載品目リストを基に当院作成)

保険と自費を分けているのは、使う薬剤や材料が国の公定価格に載っているかどうかです。リグロスは薬価基準に、GTR膜は材料価格基準に収載されているため保険で請求できますが、エムドゲインをはじめ収載のない材料を使う治療は全額自己負担になります(薬価基準収載品目リスト、2026年8月時点)。

エムドゲインが自費になる理由

歯科用薬剤として薬価基準に収載されているのは全28品目で、内訳は局所麻酔薬が15品目、抗菌薬や軟膏などが11品目です。歯周組織の再生を目的とする薬剤は、リグロスの2規格だけです。エムドゲインの主成分であるエナメルマトリックスデリバティブは、内用薬・注射薬・外用薬・歯科用薬剤のいずれのリストにも収載がありません。

エムドゲインが自費になるのは効果が劣るからではなく、公的医療保険の給付対象として値段が定められていないためです。自費の治療費は医院ごとに設定されるので、金額の比較は各医院に確認するほかありません。

保険と自費のどちらを選ぶかの判断軸

当院は、まず歯周精密検査とエックス線・CTで骨欠損の形と深さを確認し、保険で完結できる範囲を先に尽くすことを基本にしています。デジタルレントゲンの被ばく量は医科の胸部レントゲンの約10分の1で、複数回撮影しても身体への負担を抑えられるためです。

そのうえで、保険では足場を作れない骨欠損や、複数の歯にまたがる広い欠損では自費の材料が選択肢に入ります。順序を逆にすると、保険で対応できたはずの症例まで自費になりかねません。自費をすすめられたときは、「保険で対応できない理由」を説明してもらってください。その説明が骨欠損の形や深さに基づいているかどうかが、納得して選ぶ手がかりになります。

保険のGTR法を受けられる歯科医院は限られる

東濃5市では150機関のうち7機関のみが届出済み(出典: 東海北陸厚生局 施設基準の届出受理状況を基に当院集計)

GTR法は、施設基準を満たして地方厚生局長に届け出た保険医療機関でなければ算定できません。施設基準は「歯科又は歯科口腔外科を担当する歯科医師として相当の経験を有する歯科医師が一名以上配置されていること」と定められており、届出のない医院ではGTR法を保険で受けられません厚生労働省 特掲診療料の施設基準等、2026年8月時点)。

東海北陸6県では届出率が1割前後にとどまる

届出は義務ではないため、実際に届け出ている医院は一部です。東海北陸厚生局の届出受理医療機関名簿から県別に集計すると、6県計7,811機関のうちGTR法の届出は824機関で、割合は10.5%でした。

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施設基準を届け出た歯科医療機関うちGTR届出届出率
岐阜県 960 93 9.7%
愛知県 3,551 418 11.8%
静岡県 1,659 112 6.8%
三重県 780 98 12.6%
富山県 411 50 12.2%
石川県 450 53 11.8%
6県計 7,811 824 10.5%

岐阜県内でも地域によって差がある

県内でGTR法の届出が最も多いのは岐阜市の24機関ですが、東濃地域の5市では合計7機関にとどまります。

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施設基準を届け出た歯科医療機関うちGTR届出届出率
多治見市 50 2 4.0%
中津川市 33 2 6.1%
土岐市 28 2 7.1%
瑞浪市 20 0 0.0%
恵那市 19 1 5.3%
東濃5市 計 150 7 4.7%

【集計方法】 対象は東海北陸厚生局の届出受理医療機関名簿(歯科)に掲載され、施設基準を1件以上届け出ている歯科医療機関。N数は岐阜県960機関、6県計7,811機関、時点は2026年7月1日現在です。受理番号欄の略称「(GTR)」の出現件数を医療機関単位で数え、所在地の市郡名で分類しました。届出率は当院が名簿から集計した数値で、出典ページ自体に掲載されている値ではありません。データ出典は東海北陸厚生局 施設基準の届出受理状況、略称の対応は同局の略称一覧で確認しています。

一方、リグロスを使う方法には施設基準の届出が要りません。フラップ手術と薬剤の組み合わせで算定するためで、対応できる医院はGTR法より広くなります。当院は、届出の有無で受けられる治療が変わる以上、患者さんが事前に確かめられる状態であるべきだと考えています。上記の名簿で調べるか、医院に直接聞いてみてください。

要点: 膜を使うGTR法は届出医療機関に限られ、東濃5市の届出率は4.7%です。居住地によって保険で選べる術式が変わります。

よくある質問

リグロスはいつから保険で使えるようになったのですか?

2016年9月28日に「歯周炎による歯槽骨の欠損」を効能・効果とする医薬品として承認され、その後に薬価基準へ収載されました(PMDA 添付文書等情報)。それまで歯周組織の再生をねらう薬剤に保険適用のものはなく、保険診療の選択肢を広げる転機になりました。

保険の再生療法では、どんな薬や材料が使われますか?

リグロス歯科用液キット(600μg・1200μg)と、GTR法に使う歯周組織再生材料(膜)の2種類です。どちらも国が価格を定めた保険適用品のため、同じ規格を使うかぎり医院による費用の差は生じません。骨欠損が広い場合は1200μgのキットが選ばれることもあります。

保険の再生療法を受ける前に、どんな検査を受けますか?

歯周精密検査と、骨欠損の形を確かめるエックス線撮影です。手術後には歯周病部分的再評価検査(1歯15点)があり、手術した部位ごとに治り具合を1回だけ保険で確認できます。

まとめ

歯周組織再生療法は、リグロスを使う方法とGTR法の2つが保険の対象で、1歯あたりの自己負担は3割負担で約1,900〜10,400円が目安です。適応を分けるのはポケットの深さではなく骨欠損の形で、膜を使うGTR法は届出のある医院に限られます。まずは歯周精密検査とエックス線で、ご自身の骨がどのタイプかを確かめるところから始めてください。適応の可否や治療の進め方は歯の状態によって変わるため、個別の事情は歯科医師にご相談ください。

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